【インタビュー】「なくてもいいものだけどあったら面白い」… 『アトの跡』ほしさらい チャレヒト

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ゲームクリエイターの熱い想いとこだわりを探り出す「中の人に会いに行く」企画。

今回紹介するのは「アトの跡」制作者のほしさらい チャレヒトさんです。
「アトの跡」がいかにして生まれたのか、たっぷりお伺いしてきました。

どうにか新しいゲームを作りたくて

cap3

ーー平:本日はよろしくお願いします。
早速ですが、「アトの跡」の話をお伺いしたいのですが、ご説明いただいても良いですか。

チャレヒト:「アトの跡」は、「ゼルダの伝説」や「戦場の狼」のような見下ろし型のアクションゲームです。
主人公は死なないんです。ダメージを受けても一定の期間ダウンするだけですぐ生き返るのですが、自分の足跡の後を女の子がついてきて、その女の子がやられたらゲームオーバーです。
プレイヤーはアトを操作してその女の子を守りながら、目的地を目指そうというゲームです。

ーー平:無敵というところは拝見したんですが、そもそもこのゲームを作ろうというきっかけはなんでしょうか。

チャレヒト:そもそもがかなり紆余曲折しているんですよ。
最初はなんとなく、どうもゲームというものが作れるらしい、プログラミングというものがいるらしい、みたいなところから勉強を始めました。
絵は描けないけれど、ドット絵なら小さくてポチポチしているからいけるんじゃないか、から始めたんです。

はじめは簡単なシューティングから作っていたんですが、既存のシステムのゲームを作っても面白くないな、というのがあって。
懲りすぎてどうにもならなくなってしまうという結構最初に失敗する、陥りやすいパターンでもあるんですが。
どうにかして新しいゲームを作りたいと考えている時に、クインティなどをお作りになった田尻智さんが、ひとつの動作をゲームの軸に据えると作りやすい、みたいな話をされていたのをどこかで聞いて、じゃあてくてく歩いていく、足跡をテーマに作っていこうと思いました。

ひとつ前に作ったシューティングゲームが、今の作品にコンセプトが似ているんです。
自分は無敵なんですが、後ろにある城壁が壊されるとゲームオーバーになるゲームを作っていました。
同じように、自分以外のものを守る、後ろからついてくる何かを守る、っていうゲームだったら面白くなるかもしれない、と思ったんです。
後ろからついて来て守りたいものってなんだろうと考えたら、それは女の子が一番わかりやすいかなと思って今のゲームの形になりました。

「アトの跡」は試行錯誤の結晶

cap2

ーー平:ゲームをお作りになる中で、色々と紆余曲折あると思うのですが、大切にされていることやこだわりはありますか。

チャレヒト:自分の場合は全部ひとりでやっているので、あまり篭りすぎないようにすることですね。
ひとりでやっていると、本当になにが面白いのかとか、何が伝わっていて、何が伝わっていないのかとかが全くわからなくなってくるので。
自分の場合は定期的に締切りとして、イベントに出すとかコンテストに出すだとか設定しています。
定期的に人の前に出していって、反応をじっと見て、そこから改善点をもらうという感じです。

ーー平:なるほど。
「アトの跡」は最終的にはやはりゴールみたいなのがあって、それに向かって作っているのでしょうか。

チャレヒト:そうですね。
元々、人間の絵が描けなかったのでロボットを主人公にしていたのですが。
じゃあ、このキャラクターがある世界とストーリーを考えようと思って。
一章を、7月のBitSummitまでに、作れたら良いなと考えています。まだ受かっているかはわからないのですが。

ーー平:今後はどんなゲームを作っていきたい、というのはありますか。

チャレヒト:とりあえず今のゲームを完成させることですね。
今のゲームをどうしたいかという話をすると、もしゲームを作っていないパラレルの自分がいたとして、そいつに見せてみて、「面白いかもね」くらいは言わせて最後までプレイさせる、という事が出来たら良いなと思っています。

ーー平:それは面白い観点ですね。初めて聞きました。

チャレヒト:商売としてやるなら、また別の目標を持てるのだと思うのですが趣味で自分が作りたいものを作るとしたら、そこがゴールなのかなと思っています。

ーー平:究極ですよね、自分が楽しいと思えるかどうか、って。
全く知らない状態の自分が、ということですよね。

チャレヒト:ゲームを作ってくる中で、「面白い」とは何だろうと幾度となく考えるんですが、「面白い」という感情は「楽しい」とか「悲しい」とかと一緒で完全に主観でしかないんです。
じゃあ、それを他の人といかに共有するか、という話になってくると思います。

個人個人が持っている「面白い」というのは、絶対その人にとっては面白いことに間違いはないんですよ。
ただそれをどう人に伝えるか、どう共有するかというやり方が上手かどうかなだけで。
なので、面白いという感情の共有をうまく出来たら良いなと思っています。
言うは易し行うは難しなのですが。

ーー平:2015年のBitSummitでのユーザーさんからのコメントとしては、どうでしたか。

チャレヒト:去年のBitSummitは、実はあまりうまくいかなかったんです。半分打ちのめされたくらいです。

デジゲー博にも去年だしたのですが、そこで初めてやっと面白くなったかもしれないと思えました。
そこで初めてゲームのシステムが確立したくらいです。

ーー平:なるほど。そこでグレードアップしたということなんですね。

チャレヒト:そうですね。あとはこれにイベントと、区切りを綺麗にするくらいにして、それを7月に出そうと思って今制作を進めています。

ーー平:BitSummitからデジゲー博までに変わった事はなんだったのでしょうか。

チャレヒト:本当に一番初めのゲームは、主人公がいて、女の子が後ろからちょろちょろついてきて、主人公は剣か何かを振って敵を倒して進んでいくというだけのゲームだったんです。
自分か女の子がやられたらゲームオーバーだったのですが…
何だこれ、全然面白くない、と。

ーー平:ものすごい自己否定ですね。

チャレヒト:そこで、ゲーム雑誌やサイトのインタビュー記事をいろいろと見てみると、何かひとつの軸を定めて作ったほうがいいと書いてあるんですよ。ひとつの面白さがあって、そこを軸にして作れ、と。
じゃあこのゲームの面白いところは何だろうな、と改めてちゃんと考えてみたら、女の子を守ることが楽しいゲームなのではないか、と思ったんです。
女の子を守るなら、後ろからついてくるだけではダメだなとなり、守るんだったら主人公死ななくて良いよね、と思って主人公を死なないようにしました。
そして、女の子を守るなら守っている実感が欲しいよね、となって、じゃあ主人公は攻撃するんじゃなくて敵の攻撃を跳ね返したり反射するアクションがあったら守っている感が出るんじゃないかな、と思ったんです。

様々な試行錯誤があった結果、それをデジゲー博に持っていたら、「面白い」と言ってもらえました。

cap1

ーー平:やりましたね。

チャレヒト:本当に始めの一歩なんですが。

ーー平:そういった、一個一個の意味を考える事から始めないといけないんですね。

チャレヒト:最初は目をつむってダッシュしていたような感じでしたね。
違う、なんかここじゃない、みたいな。
じゃあちゃんと手探りで探そう、と思って。
今はやっと方向がわかった、というような感じですね。

ーー平:面白いですね。作り方って。
あとはもうそこを突き詰めてガリガリ進めていくという事ですね。

チャレヒト:そうですね、あんまり時間をかけないように。
これでお話が面白くない、となったら嫌なので頑張りたいです。

現実主義と理想主義

cap4

ーー平:最後の質問なのですが、チャレヒトさんにとってゲームとは何でしょう。

チャレヒト:なくていい物だけど、あったら面白いものですね。

ーー平:これは、いちユーザーとしても、いちクリエーターとしても、でしょうか。

チャレヒト:そうですね。ゲームってなくても良いと思うんですよ。
本とか映画とかアニメとか、自分の中では全部一緒なのですが、無くても良いんですが、あったら面白くて、そこから何かをもらえることもあるんです。
時間を無駄にしてしまうこともあるんですけどね。

ーー平:時間を無駄に使うこともある、というのは確かにありますよね。

チャレヒト:自分はゲームが好きすぎる、というのもあるんですが、出来るだけ現実感を見失わないようにしよう、と思っています。
自分の考え方になっちゃうんですけど、出来るだけものを具体的に考えようと意識しています。
具体的に考えないと、実現しないんですね。ゲームを作る事にしても。

例えば僕はゲーム作るんだ!となった時に、自分の中に理想主義の自分と現実主義の自分、二人がいるんです。
理想主義の自分はどんどん前に進んでいって、作りたいんだ!やりたいんだ!完璧に完成するまで公開したくないんだ!でも面白いのが作りたいんだ!出来ないんだ!というどうしようもないヤツがいて、その度に、お前それいつ作るんだよ、完成しないだろ、締切設けろ、と言う現実主義のヤツもいて、コイツが居なくならないように、コイツの口を塞がないように気をつけています。

ーー平:現実主義くんがいなくなってしまうと永遠にリリースされなくなっちゃうんですね。

チャレヒト:理想主義がすごくパワーがあるのでヤバイんですが、そいつの手綱を取りつつ、という感じです。

ーー平:良いですね。そのように客観的に見ながら作られている、という事ですね。
本日はお話ありがとうございました。

チャレヒト:ありがとうございました。

おわりに

本当に多くの葛藤や試行錯誤があって形になりつつある「アトの跡」。
「個人個人が持っている”面白い”というのは、絶対その人にとっては面白いことに間違いはないんですよ」の言葉はシンプルですが、ゲームを作る上で大切な考えだなと感じました。
作り手の「面白い」という気持ちをどうやって遊び手に伝えるか。
ゲーム作りの醍醐味はそこにあるのかもしれませんね。完成間近な「アトの跡」、リリースが楽しみですね!

【制作者プロフィール】

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ほしさらい
チャレヒト

1990年生まれ。ゲーム制作が趣味の日曜ゲームクリエイター。エスコートACTゲーム「アトの跡」がニコニコ自作ゲームフェス4でふりーむ賞・ZUN賞を受賞。現在、「アトの跡」の完成を目指して製作中。

▷ゲームサークル「ほしさらい」のブログ: http://hosisarai.blog.fc2.com/
▷Twitter: https://twitter.com/charehito

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